契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「あ、はい」
あれ、契約書、だったんだ……。 というか、なんか本格的だ。
考えてみたらそうだ、これは契約なのだ。口約束なわけがない。
桐生さんの掛けるソファーに近づくと、桐生さんは自分のとなりの空いているスペースに手を置き「どうぞ」と私に掛けるよう促す。
「失礼します」
いよいよだと思うと、また違った緊張感に心拍数が上がるのを感じた。
「この間画像で送ってくれた宇佐美さんが希望する契約の項目を含めて作ってもらったものになるから、読んでみてもらいたい」
横から手渡された書類は、数枚が綴じられていた。
一番上には〝婚前契約書〟と書かれてあり、それを目にした瞬間、どくっと心臓が驚いたように高鳴った。
【夫、桐生七央(以下、「甲」)と妻、宇佐美佑華(以下、「乙」)は、後に予定される甲乙間の婚姻に関して、●年●月●日付で以下のとおり婚前契約書を締結する。】
気を引き締めて読み始めたものの、冒頭から心の中では「ゔ……」と唸る。
何か契約をする際に必ず読まなくてはならない、こういった契約内容がつらつらと記された文章。
甲だとか乙だとか、それが出てきただけで気後れしそうになる。
だけど怖じ気づいている場合ではない。
横顔に桐生さんの視線を感じながら、文字の羅列を目で追っていく。