契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
そう言われてしまうと間違いはない。
だけど、ふたりの生活費もこのマンションの家賃もすべて桐生さんが負担するのはさすがにやりすぎではないかと思える。
この部屋なんて、とんでもない家賃に間違いないし……。
「とにかく、そこは一切気にしなくていい。その代わりに、ちゃんと〝妻〟をやってくれたらそれで十分だから」
「それは、わかってますけど……」
「じゃあ、続き」
腑に落ちていない私の様子に構うことなく、桐生さんは契約書に目を落とす。
「第六条……甲と乙は、互いに思いやりを持って家事の遂行に協力するものとする。ただし、甲は乙が行った家事の一切につき、協議の上決定した賃金を支払うものとする」
「え、あの、ちょっと待ってください!」
生活費の負担もして、私が家事をやったら賃金を支払うって、それは本当にさすがに無いんじゃ……!
「生活費も桐生さんがすべて負担して、その上私が家のことをしたら賃金を、だなんて、さすがにフェアじゃないです。私がいたたまれません」
「いたたまれないって、おかしなこと言うな」
「え?」
「当たり前だろ。宇佐美さんは好きでもない男の世話をするかもしれないんだから、仕事も同然。お金をもらうのは何もおかしなことじゃない」