契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「引っ越し、無事にできた? 手伝えなくて悪かった」

「いえ! 大丈夫でした。荷物も思ったより少なかったですし」

「少なかった? 家具とか大きなものは、処分を?」

「あ、はい。そんな感じです」


 休みの日程が合うから引っ越しを手伝うと言われたところで、それはそれで私的に都合が悪かった。

 というのも、桐生さんには住んでいたマンションをまだ引き払っていないことは言っていない。

 なんとなく、いろいろなことが信用できずに保険を掛けているみたいで、なんとなく言いづらいからだ。

 このままここでうまいことやれるようになれば、そっと解約をすればいいだけのこと。わざわざ今言う必要もない。


「あの、食事されていないですよね? 夕飯作ったので、良かったら」 


 話題を変えようとリビングに入ってきた桐生さんに聞いてみると、桐生さんはキッチンを肩越しに振り返る。


「俺の分も作ってくれたんだ? それなら、喜んで」

「じゃあ、用意しますね」


 桐生さんは一度ソファーに置いた小さなボストンバッグを持ち直し、「片付けてくる」とリビングを出ていく。

 その姿を見送りながら、急いで食卓の用意に取り掛かった。

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