契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「おっ、すごいな」
再びリビングに戻ってきた桐生さんは、ダイニングテーブルの上に並べた食事を見て好感触な声を上げる。
心の中で『よし!』とガッツポーズを決めて「座ってください」と促した。
「何が好きかうかがってなったので、勝手に作ったんですけど……」
「手料理ってだけで価値があるよ。和食は好き。嫌いなものは特になない」
ご飯と味噌汁を取りにキッチンに入る。炊飯器を開けると、たこの炊き込みご飯がいい香りを漂わせた。
「そうなんですか。それならよかったです」
ふたりぶんのご飯と味噌汁を持ってダイニングテーブルに戻ると、椅子に掛けた桐生さんは並んだ料理を眺めていた。
あまりまじまじ見られるのはなんだか恥ずかしい。
これまで男の人に手料理を振る舞う機会なんて、もう亡くなってしまった父親くらいにしか経験がないからだ。
「ああ、そうだ。これ」
桐生さんの前にご飯と味噌汁を置き終えたタイミングで、桐生さんが隣の座席から紙袋を取り出す。
「お土産。北京の老舗らしいけど」
「え、重っ」
受け取って思わずそんな声が漏れる。
ずしっと重いその中を覗くと、赤い箱が入っていた。