契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「ありがとうございます。お菓子、ですか?」
「ああ。月餅とか、饅頭の詰め合わせみたいな感じだったけど、食べきれなかったら職場に持っていくといい」
「月餅……! 好きです!」
紙袋の中を覗いたまま、つい顔がにやけてしまう。
北京の老舗菓子店の月餅にありつけるなんて、私にとってはまさかの嬉しい出来事だ。
「良かった。お菓子とか詳しくなくて、CAに聞いて教えてもらった情報だから、間違いはないと思うけど」
「CAさんに……そうなんですね、わざわざありがとうございます」
「そういう約束だから、気にしなくていい」
さらっとそう言われて、〝ああ、そうか〟と気付く。
私との契約内容に、フライト先でその場所のご当地スイーツを購入してくるという内容があるからだ。
スイーツ好きな私と契約を結ぶために、桐生さんが提案したこと……。
ただ、それを破らないように守ったということだ。
「では、あとでいただきましょう」
もう一度「ありがとうございます」と言って、ずっしりと重い紙袋をキッチンにさげた。