契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「じゃあ、早速」


 ダイニングテーブルに戻ると、私を待っていたらしい桐生さんは「いただきます」と手を合わせ箸を手に取る。

 向かいの席につき、同じように箸を手にした。


「いただきます……」


 チラリと、正面の桐生さんに目を向ける。

 姿勢よく椅子に掛け、すっと長い指先には正しく箸が持たれている。

 上品な食事姿は、自然と育ちの良さが現れている証拠だ。


「うん、美味い。味がしっかり染み込んでる」


 豚の角煮を食べた桐生さんは、作り手としては嬉しい感想を述べてくれる。

 ふと目の前の光景に、結婚したらこんな感じなのかと新婚生活の絵が浮かび、意味もなく動揺して視線がテーブルの上でうろうろしてしまった。


「良かった……お口に合うならひと安心」

「この炊き込みご飯も美味しい。今までも自炊を?」

「毎日はしてなかったです。休みの日に作り置きして冷凍にしておいたり……冷凍しておくと食べたい時に食べられるので、疲れて帰ってきた時にも便利で」


 私の話を聞きながら、桐生さんは休まず箸を進めている。

 その話に感心したように「へぇ」と私の顔を見つめた。

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