契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 驚く間もなく私をソファーから立ち上がらせた七央さんは、いきなり私の体を正面から抱き上げる。

 何が起こったのか一瞬わからない自分がいて、固まったまま身動きも声も出なかった。だけど……。


「あのっ、七央さん? 下ろして、私、重いからっ」


 そうこうしているうちに、抱き上げられた体は七央さんによって自室から連れ出されていく。

 軽々と運ばれていき、やっと降ろされたその先は、寝室の広いベッドの上だった。

 スプリングにお尻が柔く受け止められ、七央さんの腕が離れていく。

 ばっと顔を上げた先、私を見下ろす切れ長の目と視線が交差した。


「寝る場所はここ。あんな場所で寝るな」

「え、でもっ──」


 それは、一緒に寝るってことですか……?

 それが口に出せない。

 ベッドを振り返るとシーツがわずかに乱れていて、七央さんが横になっていた形跡が残されていた。


「私は大丈夫ですので、明日、仕事の前に布団も用意しようと思ってて、だから今晩は適当に──」

「駄目だ」


 私の声をぴしゃりと遮って、七央さんのほうも譲らない。

 薄い唇を一文字に結び、依然として私を見下ろすその視線から逃げるように床に視線を落とした。

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