契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「俺が出るから。ここを使えばいい」
「えっ」
あっさりとそう言って、ベッドサイドに置いていたスマートフォンを手に取ると、掛けたままの私の前を横切っていく。
「待って!」
咄嗟にその手首を掴んで止めていた。
さすがに、そういうわけにはいかない。
「私が出て行くので、ここは七央さんが使ってください。今日はお仕事で疲れてるだろうし、ベッドで休んだほうがいいに決まってますから!」
掴んでしまった手を引いて自分が立ち上がり、代わりに彼を自分の掛けていた場所に座らせる。
その間、顔を見上げることはできなくて、ずっと七央さんの胸元に視線を留めていた。
「では、おやすみなさい」
逃げるようにしてくるりと部屋のドアへと体を向けた時、今度は私の腕が背後からがしっと掴まれる。
えっ?と思って恐る恐る振り返ってみると、私の腕を掴んだまま離さない七央さんがじっと私を見つめていた。
「わかった。そこまで言うならベッドは使う。でも……」
「え? あのっ、七央さん──」
立ち上がった七央さんは、広いベッドの周囲を反対側に向かって私の手を引いていく。
今掛けていた反対側のベッドサイドまでいくと、私の肩を押してそこへ座らせた。
「佑華が出ていく必要はない。一緒に使えばいいだけのことだろ?」
「へっ……!?」