契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
い、一緒に使うって、ここを!? この、ベッドを!?
心の中でそう叫んでいる間にも、七央さんは平然と私を置いて元いた反対側へと戻っていく。
その姿を振り返り固まって見ている私に構うことなくベッドへと上がった。
とんでもない状況に陥り、ベッドに浅く腰かけたまま瞬きを繰り返す。
本当に? 冗談抜きでそんなことを言ってるの……?
「契約結婚、という形ではあるが、俺たちは夫婦だ。寝室が同じということにおかしな点は何もない」
背後から聞こえてきた七央さんの声の調子は、いつも通り落ち着いている。
肩越しに振り向くと、ちょうど体を横にしたところだった。
「だけど、別に何もしない。それを気にしてあんな窮屈なところで寝ると言ってるなら、安心して手足伸ばしてここで寝ればいい」
そんな風にはっきりと言われて、自分が何を要らない心配でいっぱいになっているのかとどきりとした。
これでは、ずいぶんと自意識過剰な女みたいだ。
七央さんのこの言い方だと、私が横に寝ようと全く興味もないといったところだろう。
思い上がっていたみたいな自分が急激に恥ずかしくなってきて、気付かれないように深く息を吐きだして気持ちを落ち着けた。
「わかり、ました。すみません……」
背を向けたまま謝り、おずおずとベッドの上に両脚を持ち上げる。
七央さんのほうに目を向けられないまま、ぎゅっと強く目をつむった。
「では……おやすみなさい」
広いベッドの端に身を寄せ、『早く寝てしまえ!』とひたすら呪文のように何度も何度も心の中で唱えていた。