契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました



 遠く微かに鳴っている聞きなれたアラーム音で意識はゆっくりと浮上した。

 音が遠かったのは、キャミソールの上に羽織っていたパーカーのポケットにスマートフォンを入れたまま寝ていたからで、そのせいで音がこもっていたのだった。

 昨晩ベッドに入ったのは、十一時頃だった。

 それから必死に眠りの世界に向かおうとしていたけれど、なかなか寝付くことはできなかった。

 やっとうとうとし始めた頃、となりで七央さんが動き出す気配でまた意識がはっきりと戻った。

 その後、七央さんはベッドから出、寝室を出ていったけれど、そこからひとりになり眠れるかと思いきや、今度はいつ戻ってくるのかと構えると目が冴えてしまった。

 微睡んだり、目が覚めたり、そんなことを繰り返していたせいで結局眠れたのか眠れなかったのかよくわからない感じで空が白んでくる時間となった。

 どこで眠るか騒動の一件のせいで、翌日から夜勤だったこともすっかり忘れていた私はサイクルが狂い、二度寝三度寝をして、十一時近くにやっとベッドを出た。

 オフだという七央さんは規則正しい時間に寝室を出ていったようだけど。


 なんか、時間的には十分寝たはずなのに疲れてるな……。


 寝室を出て洗面室に寄り、自室に入って朝の支度を済ませる。

 着替えを済ませて鏡でメイクをしたはずの顔を見ると、どこか顔面に疲労がにじみ出ている感じがした。

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