契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
ダイニングテーブルには、すでにランチョンマットとパスタを食べるためのフォークとスプーンがふたり分用意されていた。
昨日の夕飯で掛けていたほうの席に腰を落ち着かせ、キッチンに立つ七央さんに目を向ける。
なんだか、今自分が目にしている光景にやっぱり現実味がない。
〝夫〟という相手が、ブランチを用意してくれている。
たとえ契約結婚という特殊な事情でも、そんな未来が来る日があったなんて私ですら想像していなかった。
こうして落ち着いて見てみると、初めて空港で会ったときに受けた衝撃が蘇ってくる。
ひと目見た瞬間、どきっと心臓が驚いたように跳ねたのを今でもはっきりと覚えている。
眉目秀麗といえる整った顔立ちと、パイロットの制服を着こなすスタイルのいい長身。切れ長の涼し気な目は厳しさを備えていて、目が合うと緊張を強いられた。
ほんの数十秒の挨拶をしている間、私の鼓動は普段あまり体験しない速度でどくどくと高鳴っていた。
まさか、その彼とひとつ屋根の下とは、私も神様に相当弄ばれている。