契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
午後四時前。
本当は夜勤前に独り暮らしをしていたマンションに客用布団を取りに帰ろうと思っていたけれど、昨日の話し合いでそれも必要がなくなり、仕事前の時間はゆっくりと過ごした。
七央さんは少し出かけると外出していき、その間、作り置きおかずの調理と洗濯をこなしてすっきり。
そろそろ出勤しようと出かける用意をしていたところ、少し前に七央さんが帰宅した。
「では、仕事に行きます」
リビングのソファーでスマートフォンの操作をしている七央さんに声をかける。
ブランチ前の勘違いから、ひとりで気まずくてちゃんと顔が見られない。
七央さんがスマートフォンを置いてソファーを立ち上がり、こちらに向かってくるのを目にして「いってきます」と玄関へ向かう。
「病院まで送ろうか」
「え、ああ、大丈夫です。ここから電車でどんな感じか、とりあえず一回自分で通勤してみたいですし」
今日が引っ越してからの初出勤。
電車通勤にも早く慣れておきたい。
「って、そう言われると思ったんだけど、一応訊いてみた」
「なんですかそれ」
そう言って笑いながらも、気遣いがありがたいなと思う。
「七央さんって、優しいですね」
「え……?」
「それが自然なことで意識してないかもしれないですけど、優しい人なんだなって」