契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
『機長がお礼の挨拶をしたいと言っていまして』
飛行機から降りる際、彼女にそう言われて断っていた。
わざわざ機長にまでお礼を言ってもらうようなことではないし、静かに立ち去ろうと決めていたからだ。
「あ、どうも……」
「すみません、追いかけるようなことをしてしまい」
「いえ! そんなことは」
「どうしても一言直接お礼をと、機長が」
「そうでしたか……ほんと、そんなわざわざご丁寧に──」
そう言いながら目を向けた先、華やかな集団の中でひと際輝きを放っている姿が目に飛び込んでくる。
制服を着こなすすらりとスタイルのいい高身長に、艶のある漆黒の髪にはパイロットの制帽。
目が合った瞬間、不覚にも鼓動がどきんと音を立てて鳴ったことに自分自身驚いた。
涼し気な切れ長の目は、常に冷静さを見失わない厳しさが窺える。
そんな分析をしているうち、パイロットの制服に身を包んだその男性が、私の目の前へと歩み寄った。
近づくと、より身長の高さを感じさせる。
彼は私と対面すると制帽を取った。緩やかな曲線を描く綺麗な黒髪がさらりと揺れる。