契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
僅かなもやもや
三段のケーキスタンドには、トロピカルなマンゴーを使ったデザートが並ぶ。
一番上の段に載るマンゴーのマカロンを取り皿に取っていると、横から亜紗美の慌てた「待った待った!」という声が飛んできた。
「え……で、じゃあ今、佑華は人妻ってこと?」
「まぁ……一応、そういうことになるかな」
一応ではないけれど、この勢いで問い詰められると曖昧な返事をしたくなる。
あの沖縄旅行の後、久しぶりに亜紗美と会う約束をした今日は、恵比寿にあるホテルのアフタヌーンティーに来ている。
いつも通り『最近どうよ』と近況を伺う話になると、あの旅行のあと、訳あって契約結婚をすることになったと話した。
結婚の〝け〟の字もなかった私からそんな話をされた亜紗美は、厳かな会場で痛い視線を浴びる声を上げた。
それでもそんな周囲からの反応を気にすることなく、一から詳しく話しなさいと迫った。
この話題を出す場所じゃなかったと後悔したけれど、時すでに遅し。
職場の同僚に誘われ、ドルチェプレートに釣られて参加した食事会で七央さんに再会したこと。
その時に、相談したいことがあると言われてふたりで会う約束をし、契約結婚の話を持ち掛けられたこと。
悩んだ結果、七央さんと契約結婚という形で一緒になり、今一緒に住んでいるところまでをざっくりと話した。