契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「ご搭乗ありがとうございました。機長の桐生と申します。先ほどは、機内の緊急事態にご協力をいただきまして、大変助かりました」
丁寧に挨拶とお礼を口にされ、「いえ!」と恐縮してしまう。
「私は何も。でも、機内で出産などにならず搬送できて良かったです」
「迅速で的確な対応をしていただいたと聞いています。クルーを代表して、お礼を申し上げます」
彼が改めて頭を下げると、後ろに控える乗務員たちも頭を下げる。
ロビーの一角で仰々しい雰囲気になってしまい、周囲の注目を集めてしまった。
「そんなそんな! こちらこそ、ありがとうございました」
居たたまれなくなり「亜紗美、行こう」と声をかけ、最後にもう一度頭を下げてその場を立ち去る。
あとからついてきた亜紗美が、私の横にぴったり並んだ。
「え、ちょっと、今のがうちらの乗ってた飛行機飛ばしてた人?」
「みたいだね」
「機長って言ってたもんね。え、若くて超イケメンだったじゃん、何あれ」
亜紗美はどこか興奮気味にそんなことを言う。
確かに、かなり容姿端麗な人だった。
直視するのもちょっと緊張してしまう整った顔立ちだったし、加えて高身長にパイロットというハイスペック。
きっと、綺麗な客室乗務員にモテモテなんだろう。
「CAが放っておかないだろうね~、あれは」
「だね。ね、亜紗美、何食べてく?」
「あ、そうだった。何がいいの、甘いの」
「んー……そうだな。生クリームが食べたい」
そんな会話を交わしながら、足早に到着ロビーをあとにした。