契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「おかげで、両親も安心したと思う。今日の様子じゃ、ふたりもかなり佑華のことを気に入ったみたいだった」
「それなら良かったです。私で大丈夫かなって、思っていたので……」
「これで、ひとつ目的は達成できた」
「私と結婚するとなれば、もう今後、お見合いしろとは言われないですね」
七央さんが契約結婚をしたいと望んだのは、早く身を固めてほしいご両親がお見合いを勧めて、それから逃れたいと思ったから。それだって苦渋の決断だったはず。
その目的が達成されたとなると、この契約結婚の意味は……?
「でも、この結婚生活はこの先も続けていきたいと思っている」
「え……?」
「うちの両親のことだから、そのうちここにも訪れたいと言い出すと踏んでいる」
続けたいなんて言われて、一瞬ドキッとしたのもつかの間、ああ、そういうことかと納得する。
さっさと解消すれば、もしそういう事態になったときに困るのは七央さんだ。
「わかりました。私は構わないです」
今日はなんか変だ。
心がざわざわして、落ち着かない。
いつもは静かな水面に、細かな波紋が広がっていくような……そんな感じ。
「佑華」
落ちた沈黙の中、七央さんが私を呼ぶ。
顔を横に向けると、私の視線を感じ取ったように七央さんもこちらを向く。
そして、私側の腕をこっちに伸ばした。