契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
私が通話に応じていたのを見て佳純が「急患?」と訊く。
「うん、小池さん、陣痛始まったっぽいって連絡」
「えっ、そうなんだ。昨日健診来てたみたいだよね」
「今から来るから、そのままお産になると思うんだよね、三人目だし」
そんな話をしながらパソコンの前に座り、小池さんの電子カルテを呼び出す。
「あ、佑華、紅芋タルトありがとねー。いただいたよ」
なぎさがカート上の片づけをしながら思い出したように言う。
一昨日帰ってきた沖縄旅行のお土産を昨日の出勤時に医局に置いておいたのだ。
「いいえー。まだ残ってた?」
「うん、みんなもらったって言うから、私二個目いただいちゃった」
なぎさがそう言うと、佳純が「え、私も欲しい」と言う。
「まだ残ってたよ。休憩の時にいただきな。あ、そうそう佑華、今度の土曜日日勤だよね? 夜予定ってある?」
「え? 土曜……」
何かあったっけ?と考えて、特に誰とも約束をしていないと即把握する。
私の約束の相手は限られているし、予定はスケジュール帳を確認しないとわからないほど立て込んではいない。
「特にないけど」
そう答えると、なぎさはパッと表情を明るくさせ、パソコンの前にかける私の元に小走りで近づいた。