契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 腕時計に視線を落とすと、時刻は午後三時二十分。

 フェンスへと近づき両手をかける。

 那覇空港十三時十〇分発、十五時二十五分羽田空港着予定の便が、七央さんとお父様が親子でフライトする便だと聞いている。

 雲ひとつない青空の遠く向こうから、ジェット機が一機徐々に近づいてくる。


「あれ……かな」


 フェンスの隙間から目を凝らすと、尾翼に〝JSAL〟のロゴが入っていた。

 予定の時間とほぼ同時刻に姿を現したジェット機に自然と鼓動は高まる。

 あのコックピットに七央さんがいると思うと、その姿から目が離せなくなった。

 目に焼き付けるように、じっと着陸の瞬間を見守る。

 無事地上に降り立ったジェット機に、心の中で「おかえりなさい、お疲れ様でした」と声をかけた。


「──あれ? 佑華さん?」


 フェンスに手をかけたまま滑走路を見つめていると、突然横から名前を呼ばれた。

 驚いてフェンスから離れ、ばっと顔を向ける。

 そこに見えた見覚えのある女性の姿に、思わず「あっ」と声が漏れていた。

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