契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「やっぱり佑華さんだ! やだ、こんなところで会えるなんて奇遇!」
展望デッキでばったり再会したのは、以前七央さんの実家にお邪魔した帰りに挨拶をした、お隣の幼なじみだという美鈴さん。
初対面の時も物怖じしない社交的で明るい人だと感心したけど、それは改めて会った今も変わらない。
「こんにちは」
あの時ちらっと挨拶をした程度で、しかも夜も更けて辺りは真っ暗だった。
それなのによく私のことがわかったなと思いながらぺこりと頭を下げる。
オフホワイトの涼し気なカットワークレースのふんわりとしたロングワンピースに、つば広のストローハットをかぶったバカンス帰りのような美鈴さん。
綺麗な長い黒髪が、胸の下で熱風を受け揺れている。
「佑華さんも繁明パパのラストフライト見に来たの?」
「あ、はい。嘉門さんも……?」
「美鈴でいいって。そう。でも、親子フライトなんてかっこいいよね。聖子ママ、泣いちゃったかな」
完全に停止し、ボーディングブリッジの装着が始まったジェット機に目を遣り、美鈴さんはフェンスに手をかける。
「え……もしかして、お母様はあの機内に?」
「うん。七央から聞いてなかった? 最後だから絶対乗るって」
そうだったんだ……。
「佑華さん、これから七央と待ち合わせ?」
話を切り替えるような明るい調子で訊かれ、「はい」と答えると、美鈴さんはなぜだかぱっと表情を輝かせる。