契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 短いひと言の【今から向かう】という文に、語尾に笑っている絵文字がひとつついている。

 知り合ったばかりの頃は文字だけのメッセージしか送られてこなかったけど、最近たまにこうして語尾にひとつだけ絵文字がついていたりする。

 きっと絵文字なんか使うのは苦手なのに、こうして付けてくれているとふふっと嬉しくてつい笑ってしまう。


「愛想のない返事だなー。絵文字もスタンプも無しだよ」


 美鈴さんに知らせたのならわざわざ私にまでいいのになんて思っていた時、向かいの美鈴さんのそんな独り言に耳が反応してしまう。

 私にはつけてくれたニコニコマーク、美鈴さんには無しっていうこと?

 そんな子どもっぽいことを比較して変な優越感を感じてしまった自分に恥ずかしくなる。

〝お疲れ様です〟というスタンプだけ送り、かごバッグの中にスマートフォンを押し込んだ。


「あ、来た来た!」


 それからしばらく雑談をしていると、美鈴さんが店内入口に向かって手を挙げた。

 振り向いた先、仕事を終えた七央さんとお母様が一緒に店内に入ってくるのが見える。

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