契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「最近は甘くして飲むようになった」

「え、そうなの? 好み変わったの?」


 七央さんと美鈴さんのやり取りを聞きながら、七央さんの気遣いに胸が締め付けられる。

 救われた気持ちの反面、自分はここにいてもいいのだろうかという疑問に頭が占領されていく。


なんか、居心地悪いな……。


誰が悪いとかではなく、自分が自分を追い詰めていく。


「繁明パパのラストフライト、どうだった? やっぱり泣けた?」

「泣けたわよー。機長アナウンスでね、最後のフライトだって話してね。息子と共にラストフライトだって。七央に、自分が守っていた空の安全を引き継ぐって。泣けるでしょ?」

「えー! 私もやっぱり搭乗しに行けばよかったな」


 飛び交う会話がほとんどまともに耳に入ってこない。

 本当はたくさん聞きたいことがあるのに、会話に参加できないまま、ただその場に空気のようにいることしかできなかった。

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