契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「じゃあ、私は聖子ママと繁明パパに会ってから帰るから」
カフェを出ると、店前で美鈴さんが私たちにそう告げる。
「お父様にお会いできなかったので、どうぞよろしくお伝えください」
お母様にそう言うと、にこりと笑って「ええ」と頷いた。
「わかったわ。ちゃんと伝えておくわね。佑華さん、また近々遊びに来てちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて挨拶した背中に、そっと手が触れる。
顔を上げると私のとなりには七央さんがいて、「行くか」と見下ろされた。
「じゃ、また」
お母様と美鈴さんにそう言うと、七央さんは当たり前のように私の手を掴む。
えっ、と思った時には指を絡めて繋がれていて、そのまま踵を返して歩き出した。
考えてみたら、こうして手を繋いで歩いたことはこれまで一度もないこと。
別れたお母様と美鈴さんがこの姿を見ていると思うと、後方を振り返ることはできない。
七央さんは繋いだ手を離すことなく空港内を慣れた足取りで歩いていく。
いつも七央さんが出勤時に停めているらしい広い駐車場にたどり着くと、やっと繋いでいた手が放された。