契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「七央さんに頼まれて、それで、契約交わして結婚しましたけど、本当は、籍だって入ってなくて……」
美鈴さんの視線を強く感じるけれど、顔を上げて目を合わせることができない。
足元に敷き詰められているタイルに目を落としたまま、言葉をまとめる。
「だから、私のことは気にしないでください。美鈴さんの気持ち、ちゃんと七央さんに伝えたほうがいいです」
メロンパンの口を閉じ、財布とスマートフォンが入るミニバッグに突っ込む。
ベンチを立ち上がって、やっと美鈴さんに目を向けた。
「七生さんのこと、こんなに想ってる人がいるって、七央さんにちゃんと知ってほしい」
「佑華さん……」
「ごめんなさい、そろそろ休憩終わるので、私行きます」
食べれなかった袋に入ったままのパンを美鈴さんに差し出す。
「これ、良かったら食べてください。どれも美味しいので」
そう言って、最後まで笑ってその場を立ち去った。