契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
仕事に私情を持ち込んで気が緩むなんて言語道断。と、普段から思ってきた自分が、今後そんなことを思ったらいけないくらい美鈴さんと別れた後の仕事はぼんやりとしていた。
破水からの急なお産が入り、そこからはいつも通り気が引き締まったけれど、夕方仕事を終えると普段以上に疲れて頭がぼんやりとしていた。
この疲労感は精神的疲労が大きいことは自分でよくわかっている。
電車に揺られ、すっかり慣れた道を帰っていく。
仕事を上がり、夕飯のことを考えると食欲がないなと思っていたら、七央さんから夕飯は済ませてくるとメッセージが入っていた。
ちょうど良かったと思いながら、帰り道にあるパティスリーにふらっと立ち寄り、目に留まったイチゴのミルフィーユをひとつ買い求めた。
帰宅すると部屋の中は薄暗く、七央さんの姿はまだなかった。
電気もつけず荷物を置き、ふらっと夜の闇に包まれ始めた窓際まで歩いていく。
「あ……」
空をじっと見つめていると、ジェット機が一機現れた。
主翼の先に緑色のナビゲーションライトを点灯させて、視界を横切っていく。