契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「おかげでほら! こんなスッキリしちゃってるよ、私。佑華さんのおかげ。幼なじみに片思いこじらせてさ、三十路なんだから笑っちゃうよね」

「そんなことはないし、笑いもしない。お前の気持ちは、素直に嬉しかった」


 物心ついた頃には、実の妹のように懐いていた美鈴。

 甘えてくれ、頼ってくれ、昔も今も家族同然に大切な存在なことに変わりはない。

 彼女の気持ちに応えられないのは、もしかしたら残酷なことなのかもしれない。

 だけど、そんな俺に美鈴はにっこりと微笑む。


「七央は、やっぱり優しいね」


 優しい──その言葉は喜ぶべき褒め言葉のはずなのに、俺を苦しめ追い詰める。

 何気ない瞬間に佑華にも何度か口にされ、困り焦る自分がいた。

 そう言って次第に気持ちが離れていくことを何度も経験している。

 だから、佑華も──。


「でも、なんなの、契約結婚て」

「え……?」

「佑華さんに聞いたよ」


 そんなことまで話したのか。

 でも、特に口止めをしているわけでもない。

 思わず言葉を失っていると、美鈴はいつもの調子を取り戻して「あのねぇ」と目を細めた。

< 229 / 246 >

この作品をシェア

pagetop