契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「私も、七央に劣らないいい男見つけるからさ、まぁ、お互い頑張ろうね」
座ったままの俺の肩を、美鈴は気合いを注入するようにトンと叩く。
そして、「じゃあね~」と軽快な足取りでひとり立ち去っていった。
わかってる。自分でも、心のどこかでは自覚している。
だけど、何かに囚われたまま動き出せない。
蜘蛛の巣に引っかかった昆虫は、そこから自力で逃げ出すことなんかできるのだろうか。
そのまま動く気力も奪われ、捕食されるのを待つだけになることが大半なのかもしれない。
ずっとまとわりついてきている、このしつこい蜘蛛の糸のようなものから逃れたい。
ジャケットのポケットからスマートフォンを取り出し、メッセージアプリを立ち上げる。
トークルームの上部にある生クリームがどっさりのったパンケーキのアイコンをタップし、言葉を選びながら文章を作っていった。