契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「あれ、仕事帰り?」


 ここから私の職場である大学病院が近いことを知っている美鈴さんは、私が仕事を終えて帰るところだと思ったのだろう。


「あー……まぁ、そんなところです。美鈴さんは?」

「そうなんだ。お疲れ様。私はこの近くに友達が住んでて、それで」


 そういえばこの間病院にお押しかけてきた時も、この近くに用があってと言っていた。友達が住んでいるからだったのだ。


「あの、美鈴さん」

「ん?」


 いざ切り出そうと思うと、どっどっ、と心臓が音を主張し始める。

 美鈴さんが小首を傾げるのを目にしながら意を決して口を開いた。


「私、今から七央さんに会う約束をしています。それで……自分の気持ちを伝えるつもりです」


 宣戦布告みたいになってしまっているけれど、これでもう最後。

 気持ちを伝えたら、七央さんと美鈴さんを引っ掻き回すことはしない。


「そっか。うん、頑張ってね」


 美鈴さんはえくぼを作ってにっこりと微笑む。

 目の前の笑顔に胸にチクリと針で刺したような痛みを感じた時、その視界の端で意識を引きつけるものが目に飛び込んできた。

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