契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
歩道の端に立ち止まり、突如アスファルトに座り込むひとりの女性。
周囲の人たちはちらりと視線を向けるも、彼女に声をかける様子はない。
「佑華さん、どうしたの?」
無言で美鈴さんを横切り座り込む女性に近づいていった私に、美鈴さんのきょとんとした声がかけられた。
「どうされましたか?」
背後から近づいていくと、女性は大きなお腹を抱える妊婦の女性だった。
そのそばには、杏莉と同じ歳くらいの女の子が一緒にいる。
恐らく臨月だろう姿に腰を落として寄り添い近づくと、女性は真っ青な顔をして顔を上げた。
「は……破水、したかもしれなくて」
やっと絞り出したような助けを求める声に地面に目を落とすと、ロング丈のワンピースを着たその足元には、確かに破水し濡れたあとが見受けられた。
「今、痛みも強いですよね?」
動けないほどの痛みに襲われているのが著明で、頷くのが精一杯。
話しかけながらバッグからスマートフォンを取り出し、一一九へコールする。
「救急車呼びますからね。大丈夫、すぐ病院に向かいましょう。かかりつけ医は?」
出産間近の女性に付き添い、数分後に到着した救急車に女性の子どもと一緒に乗り込む。
美鈴さんには「私、付き添います」とだけ言い残してその場で別れた。