契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
女性はとなりの山梨県から子どもを連れて電車で東京に出てきていた。
その先での破水、陣痛となり、山梨のかかりつけ医に搬送することは困難なため、近場の私の職場である大学病院で急遽お産の運びとなった。
ご主人に連絡を取り、事情を話してこちらに向かってもらうことになり、私はその間、女性の長女と父親の到着に付き添った。
急な出来事に遭遇し、自分のことを考えられたのはそれから二時間近くが経ってからだった。
女性の長女に付き添うことに話が落ち着いてから、七央さんとの約束の時間をその時点で三十分以上過ぎていることに気が付いた。
慌ててスマートフォンを取り出しメッセージアプリを開くと、【場所わかる?】と【迎えに行こうか?】というふたつのメッセージが入っていた。
動揺しながら事情を打ち、もう少ししたら迎える旨を文にしていると、突然ぱっと画面が真っ暗になり、スマートフォンの電源が落ちてしまった。
まさかの充電切れに頭の中は真っ白。
そこからは早く向かわなくてはと気持ちばかりが焦るだけだった。
結局、病院を出られたのは七央さんとの約束の時間、十八時から二時間近く過ぎた二十時前。
本来なら美鈴さんと街角で会い、あのまま約束の場所に向かっていれば十八時前には到着している計算だったのだ。