契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
就職するまで住んでいた実家の向かいが、助産院だった。
物心ついたときには、聞こえてくる産声に「赤ちゃん生まれた?」と、私はよく言っていたらしい。
その向かいの助産院の院長である助産師さんが、いつも穏やかで優しかった。
家の前で会えば太陽のような笑顔で声をかけてくれ、「赤ちゃん生まれた?」と訊く私に「可愛い、天使みたいな赤ちゃんが生まれたわよ」とよく教えてくれた。
産後帰っていく赤ちゃんとママを、包み込むような微笑みで見送る姿は印象的で、彼女が助産師ということを知った時にはすでに自分の夢が始まっていたような気がする。
当時、家の前にはよく小さな子どもが走り回っていた。
産後、助産院で出産し、成長した我が子を連れて遊びにくるママが多くいたのだ。
それだけ、そこで出産してよかったと感じるママがたくさんいたのだろう。
産前も産後も、ママと子どもに寄り添える助産師になりたい。
そんな風に思う私の原点は今もそこにある。
「そっか、夜勤か」
「でも、明日は満月だから忙しい予感がするな」
「出た。佑華のお月様情報」
「だって、実際高確率で満月の夜勤は忙しいんだよ。いつ満月なのかチェックするようにもなるよ」