契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「そういう人が案外誰かと上手くいっちゃったりするんだから」
「……。いやぁ、ないない。ないでしょ」
「ないって決めつけちゃダメでしょ。人生どこで何があるかわからないんだからね、私みたいに」
旅先で運命の出会いをした佑杏がそう言うと妙に説得力があるけれど、そんなこと、ほとんどの人間が体験することはない。
運命の出会い、なんて……。
「それに、私はお姉ちゃんに、一緒にいて幸せだと思える人と出会ってほしいなって、思ってるよ」
恋愛も上手くいったことのない私には、一緒にいて幸せだと思えるのは唯一肉親の佑杏や杏莉くらいしかいない。
心からそんな風に思える相手に自分が出会えるなんて、私には幻想でしかない。
「だから、ちゃんと準備は万全で行かないと。着ていく服とかもう決めた?」
「え……いや、全然、何も。なんか適当に──」
「適当って! そんなんじゃダメ。あ、そうだ! この間ね、いい感じのスカート買ったんだけど、着ていく機会なくて可哀想なスカートがあるの、見てみない?」
「え、あ、佑杏」
私の返事を聞くよりも先に、佑杏はリビングを出ていってしまう。
杏莉が私のことをじっと見つめていて、つい「困ったママだねぇ……」と話しかけていた。