契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 料理が運ばれ始めると、各々前後左右で歓談が始まる。

 出入り口に一番近い席に掛けた私は、時折となりの佳純と話し、佳純が話す向かいの男性陣の話に相槌を打ちつつ、意識は運ばれてくる料理に全集中。

 目の前に置かれた黒いプレートには、イタリアンパセリが添えられた美味しそうなローストビーフがのっている。

 これはラストのドルチェプレートも期待大だ。


「合コンとか参加するっていうことは、やっぱり結婚願望は強い?」

「んー、強いのかな? まぁ、もうすぐ三十路だし、いい人がいればしたいのが本音だけど、なかなか難しいですよね。失敗したくないですし」

 ナイフとフォークを手に早速ローストビーフに取り掛かろうとしていると、横からデリケートな内容が耳に入ってくる。

 佳純の向かいの航空整備士だという男性が、佳純にそんな質問をし始めた。

 私の向かいの同じ整備士だという男性も、ふたりの話に参加し始める。


「でも、看護師さんじゃモテるでしょ?」

「え、それイメージじゃないですか? 特別そう感じたことないですけど」

「いや、絶対モテるでしょ、ナース。宇佐美さんは? 結婚願望とかは」


 切ったお肉をあーんと口を開け運ぼうとしたところでいきなり話を振られ、慌てて口を閉じる。

 フォークに刺したお肉を持ったまま、心の中で『なんで私に話がくるの!?』と叫んだ。

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