契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「えっと……ないです、結婚願望は全く」
はっきりきっぱりと、いつも通りの調子でそう答えると、なぜだかその場が一瞬しんとする。
私と同じように向かいの真ん中の席でフォークとナイフを手にしていた桐生さんと、掠める程度に視線が交錯した。
「えー、そうなんだ、珍しいね。じゃあ、こういう席には遊べる男探しに来てる感じ?」
「いや、私は今日は付き合──」
「あぁぁー! 佑華、ちょっと酷い男に騙されまして、恋愛はしばらくお休み中で」
え、えぇぇぇ!?
私の声を遮り、いきなり佳純がそんな作り話を口にしてぎょっとする。
となりに目を向けると、「ね? 佑華」と同意を求められ、私が口を滑らせて〝付き合いの人数合わせ〟と言わないように誤魔化したのだと気が付いた。