契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「ごめんなさい」
慌てて道を譲る形で壁に背中を寄せる。
するとなぜか、通り過ぎていくはずの桐生さんは足を止め、壁に貼りついた私に向かい合った。
「君に興味を持った」
桐生さんの顔を見上げるよりも先に、耳を疑うような言葉が降ってくる。
え? 今、なんて……?
そんな思いで彼の顔を目にすると、じっと真剣に私の目を見つめている。
どう見ても冗談で言っているような雰囲気はなく、いつの間にか大きな音を立てて鳴っている鼓動に気が付いた。
「え、あの……それは、一体、どういった意味でしょうか……?」
「そのままの意味だ。君に興味を持った」
もう一度同じ言葉を言われたことで、聞き間違いではなかったと確認する。
だけど、全く意味がわからない。
興味を持ったって、私の何に……?
「すみません、戻りますね」
聞いてみたい気持ちがありつつも、無意識に立ち去ろうと体が動く。
壁から横歩きで向かい合う状態から逃れようとした時、いきなり進行方向を塞ぐように壁に片手を突かれた。