契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
ゴールデンウイークも過ぎた五月中旬。
電車に揺られる私は、なんとも複雑な感情で車窓からの景色をぼんやりと眺めていた。
日を改めてふたりきりで会えないかという、桐生さんからのお誘い。
当初は断るつもりでいたことは間違いない。
それが、〝思わぬ中身〟で行く方向に進んでしまった。
予約が取れず落ち込んでいたところに舞い込んできた、五月のル・シャルルに行けるという朗報。
桐生さんと会うのを断るということより、予約の取れなかったル・シャルルに行けるということのほうが天秤にかけたらずしっと重かった。
だけど、約束した日が近づくにつれ、本当にいいのだろうかという気持ちが膨らんだ。
そもそも会うことをお断りする方向でいたのに、ル・シャルルで会うとなったらほとんど悩まず行くことを調整していたのだ。
これでは見事に食べ物に釣られただけという感じ。
桐生さんと再会することになったあの食事会の席だって、ドルチェプレートに釣られて参加したけれど、考えてみれば今回も全く同じパターンだ。
スイーツが絡んでくると、どうも学習能力がないというか、なんというか……。
それなのに、この間のアルコバレーノのドルチェプレートは、桐生さんとのことがあったせいで百パーセント味わえなかった。
一体なんのために参加したのかわからないし、これぞ本末転倒というやつだった。