契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「結婚して幸せになりたいと思っている相手とは、一緒になるなんて無責任なことはできない。だから、結婚を望んでいない相手と、契約という形で一緒になることを望んでいる」
「契約……」
「あらかじめ、お互いの都合のいいように細かなことまで約束事を決めておく。どちらにとっても不利益が生じないように」
少しでも話に反応をみせたところで畳み掛けていく。
しかし、この話を始めてから彼女のスイーツを食べる手がぴたりと止まってしまっている。
あまり焦ってはいけないと気付き、落ち着くためにティーカップを手に取った。
「急にこんな話を持ち掛けられて驚くのは無理ない。あまり緊張せず、さっきみたいにリラックスして話しましょう。次が出てくる前に、どうぞ食べてください」
怯えさせないことが最重要課題。
一方的に要求だけしても、それでは彼女が引くだけだ。
再び彼女の手がフォークを手にし、残っているタルトへと向かうのを目にしながら、話の運び方を整理する。
「あの……それって、周囲に対して、夫婦のフリをするということですか?」