契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「そう、だったんだ……申し訳ない、何も知らずに」
「いえ。母は、私が高三の時に癌で亡くして、父も亡くなってもう四年になります。なので、身内は二歳下に妹がいるだけなんです」
「そっか、妹さんが」
「妹は、もう結婚して子どももいるんですけどね。ああ……その妹が、私の心配はしているみたいですけど。彼氏もいないし、お姉ちゃんこのままずっと独りでいる気?とかって」
この話が始まってから表情が硬かった彼女に、やっとわずかに笑みが浮かぶ。
妹さんの話で表情を緩めるということは、きっと仲のいい姉妹なのだろう。
早くに両親を亡くし、姉妹で寄り添ってきた部分もあるのかもしれない。
「じゃあ、妹さんを安心させるためにも、俺と一緒になってください」
「え、いや、あの……」
再び話を迫ると、宇佐美さんは思い出したように動揺する。
そして、何を思ったのかそれまでより急に姿勢を正し、真っすぐにこちらを見据えた。
「申し訳ないですが、契約結婚なんて私には無理です」
きっぱりと言うからには、彼女なりにこの話に対して何か思うことがあるのだろう。
もちろん、こちらからの要求ばかりするつもりはない。
「それは、なぜ?」