契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 出産を経験している佑杏は、陣痛の辛さを知っているだけあって苦い顔を見せる。


「羽田に着く少し前だったからね。子宮口もまだ五センチ開いてなかったし、着陸後にそのまま搬送してもらえたから。その後病院でお産になったんだけど、無事安産だったみたい」

「え、子宮口って……お姉ちゃんまさか、その対応したの? 飛行機の中で」

「あー……うん、一応」


 そう言うと、佑杏は大きな目を見開いて固まる。「マジか……」と呟いたあたり、相当驚いたようだ。


「さすがお姉ちゃんだわ。普通、名乗り出る自信ある人って少ないと思うよ、そういう時」


 同じようなことを桐生さんにも言われたな、と思い出していると、佑杏は「ん?」と視線を上向けた。


「え……なんでこの話になったんだっけ? この間の食事会でいい出会いあったの?って訊いて、なんで沖縄旅行の話になるの」

「あー、だから……その、私が乗ってた飛行機の機長してた人がね、その食事会に来てたんだよ」

「……。えっ、嘘! え、で、『あの時の……』みたいな? やだ、運命の再会じゃん!」


 運命の再会……なんて言うと聞こえはいいけど、別にそこからお互いの感情が動いたわけではない。

 動き出したのは、どこか非情な関係。

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