死神のお気に入り
こんな突然のプロポーズ、しかも人間じゃなくて死神の言葉に「はい。どこへでも攫ってください」と答える私は相当愛に飢えているんだろうなぁ。

「じゃあ一緒に行こう。魔界に」

僕のものになった証、と言われてルビーが埋め込まれた指輪を嵌められた後、私は攫われた。



魔界に来てどれくらい経ったんだろう。働く必要がないから日付は曖昧になってしまった。でも何年もの時は流れていると思う。

「美帆、何を見てるの?」

「星を見ているんです」

「飽きないね」

「アルトさんだって、私をずっと抱き締めているじゃないですか」

アルトさんの家の庭にあるベンチで見上げる星は綺麗だ。私はアルトさんの膝の上に乗せられ、星を見つめている。

「ねえ、美帆」

アルトさんに呼ばれて振り返ると、チュッと優しく唇を奪われる。一回キスをするとアルトさんは止められない。何度も唇を互いに重ねる。

人間の私は、死神のお気に入りの存在となっている。
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