死神のお気に入り
一日でこの仕事が終わる気はしない。今月に入って何度目かわからない残業が待っていることにため息をつきたくなる。

「黒鳥くん！ちょっと来たまえ！」

仕事を黙々と進めていると、不機嫌な様子の課長に呼び出される。嫌な予感しかしない。私が立ち上がると、他の社員からの冷たい視線が集まった。

「ここの数字、間違えているぞ！！仕事の一つまともにできないなんて君は何をしてるんだ！！」

定時ギリギリで先輩から押し付けられた書類を出し、課長に怒鳴りつけられる。最初は怖かったこの時間も、今は何も感じなくなってしまった。

何時間にも感じる説教が終わり、ようやく解放されたと思ったら「遅れてすみませ〜ん」と言い、露出度の高い格好をした女性の先輩たちが出社してくる。

「遅かったね。事故にでも遭ったんじゃないかって心配だったんだよ」

おしゃれをして大人の魅力を見せている先輩たちに、あれだけ怒っていた課長は鼻の下を伸ばして言う。彼女たちが何をしても、課長は絶対に怒らない。自分のお気に入りだから。
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