死神のお気に入り
「美帆チャン、ごめんねぇ。あたしたちの仕事までやってもらっちゃって〜」

先輩にそう声をかけられ、私は「いえ、大丈夫です」と無表情に答える。ここで文句を言えば理不尽に怒られることはもう学習済みだからだ。

「実はさぁ、昨日弁護士とか医者とかエリートが集まる合コン行って盛り上がっちゃったんだよね。美帆ちゃん、恋愛興味なさそうだし、仕事大好きだから別に仕事してもらっていいよね？メイクも安っぽいものだし、服もダサいし」

失礼なことを平気で言い、「昨日連絡先ゲットした男、イケメンだった」と騒ぐ先輩は放置して仕事を続ける。でも、キーボードを打ち続けている時、もうすっかり口癖になってしまった言葉が出てしまうのだ。

「死にたい」



定時になると、みんな勝手に帰っていく。そんな中で私だけがいつも夜遅くになるまでパソコンと向き合っている。もう疲れた。

何度、死にたいって今まで思ったかなんてわからない。でも自分から死ぬのが怖いから、いつも「事故に遭わないかな」とか「誰かが私を殺してくれないかな」とか思ってしまう。
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