死神のお気に入り
夜の八時過ぎ、ようやく仕事が終わった。私はボロボロのかばんを手にし、歩き出す。そろそろかばんを新しくしないといけない。いつもは給料を全額渡しているけど、今月分は一万円くらい私が貰いたいな。

暗い廊下を歩き、階段を降りていく。コツコツと足音が無駄に響いた。

家に帰っても私のご飯はない。かと言って作るのは時間がかかるので、コンビニでおにぎりでも買って帰ろう。

私がそんなことを考えていると、突然ふわりと体が宙に浮く感覚がした。

「えっ!?何!?」

私の体が宙に本当に浮いている。そして、そのまま地面に体が吸い寄せられていく。私はギュッと目を閉じた。



小学生くらいの頃だったと思う。この街に伝わる都市伝説を聞いたのは。

『知ってる?この街には死神は時々現れるんだって。そして気に入った人間にあるゲームをさせるらしいよ。そのゲームっていうのは、誰が死神に魂を捧げるかを決めるものなんだって』

そんな話、オカルト好きでない限り信じないだろう。この時までずっと忘れてしまっていた。
< 5 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop