死神のお気に入り
「ゲームの内容はーーー」

アルトさんが説明をしようとしていたので、私は「あの、提案があります!」と手を挙げる。もう何も怖くなんてない。

「提案?」

アルトさんが興味深そうに私を見つめる。私は迷うことなく、「私の魂を奪ってください」と言った。

ずっとこうなることを望んでいた。誰かの手によって死ぬ。それが起こるのを待っていた。誰からも愛されない、必要とされない、こんなガラクタみたいな人生を生きるくらいなら、死神に魂を奪われた方がいい。

アルトさんをジッと見つめると、「君みたいに自分から命を差し出す子、初めて見たよ」とアルトさんが近づいてくる。ああ、やっと解放されるんだ……。

横目でチラリと見ると、先輩たちはホッとしたような顔をしている。やっぱり私のことなんてどうでもいいんだ。私の代わりになる人なんて大勢いる。私は所詮捨て駒だ。

鎌でいつ斬られるのだろう。殺されたことなんてないから、少し怖い。私は強く目を閉じてしまった。刹那、アルトさんに抱き締められる。人間ではないから冷たい抱擁だというのに、誰かに抱き締められたことがない私にとっては、最期に温かい思い出ができたと思うほど幸せを感じた。
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