やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない
*
出された料理はどれも絶品だった。
食事を終えるころには私の怒りも収まり、料理への満足感とお腹を満たした幸福感で一杯になっていた。
会計は三浦部長が払った。カードで支払う彼の仕草がどこかで観たコメディ映画の登場人物のようで何故か笑える。
表情に出てしまったのか三浦部長が怪訝そうに眉をひそめた。
「ん? どうした?」
「いえ、別に」
私は片手で口許を隠す。小刻みに震える身体を必死で抑えた。
三浦部長が頭に疑問符を乗せて軽く首を傾ける。彼は会計のレシートを店員から受け取ると「じゃあ、行こう」と私を促した。