やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない
 私は会計係の店員に会釈して先に立つ三浦部長の後を追う。彼の横に並ぶと「ごちそうさまです」と一声かけた。

 僅かにうなずいて彼は頬を緩める。その表情が何か企んでいるように見えて私は反射的に彼との距離をとった。危うくグーで殴るところだったというのは内緒だ。

「うん?」

 三浦部長の頭にまた疑問符が現れる。

 とりあえず作り笑いでごまかした。顔が引きつっていないことを祈ろう。
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