やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない
 うーん、まだ企画書を出してないからかなぁ。

 思い当たるのはそれくらいしかない。

 でも、あれって今日のうちに提出すればいいんだよね?

 三浦部長のデスクの前に立つと彼はじっと私を見つめてきた。

「……」
「あの、何ですか?」
「うん、可愛い。癒される」
「えっ」

 ぼそっと彼が早口でつぶやいた声は私には聞き取れなかった。

 えーと、どうしよう。

 聞き返してもいいのかな。

 私が判断に困っていると三浦部長はコホンと咳払いした。彼の顔の赤みがさらに濃くなる。

 あ、これはかなりお怒りだ。

 私、そんなに怒られるようなことしたかな?
 
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