やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない
 私が黙ると三浦部長が拗ねたように口を尖らせた。

「この前は付き合ってくれるって言ったじゃないか」
「そ、それはそうですけど」

 そう。

 新年早々、私は三浦部長と映画を観るはめになったのだ。

 そして、その後寄った喫茶店で私は三浦部長に付き合うことを了承してしまった。

 でもあの後「付き合うってどこに行くんですか」って訊いたら、部長のテンションがものすごく下がったんだよね。

 何でだろう?

 お腹でも痛くなったのかな。

「考え事をしているまゆかも可愛いっ」

 私が数日前のことを思い出しているともごもごと声がした。はっきりと聞こえなかったので内容は不明だ。

 ま、どうせ私への悪口なんだろうな。

 無視無視。
 
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