破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 ノアがきょとんとした目で小首を傾げた。

「だいふくって何?」

「餡子を薄くしたお餅で包んだお菓子のことよ」

 餡子はザックの好物であるおやきや、カリドの宿、ゆらたま亭の看板メニューとして作ったひんやりソフトの厚焼きパンケーキで使った栗の餡子などでお馴染みだ。

 なので、ザックたちはもちろんのこと、ルーヴ家の者たちもアーシェリアスが過去に作ったお汁粉や、どら焼きを食べた経験があるので知っている。

 だが、餅については誰もが食べたことがなく、皆が一様に「もち?」と首を傾げた。

 餅そのものはまだアーシェリアスもシーゾーからもらったことがない。

 さらには、ファレ乙の世界にはもち米が存在しないようだ。

 ないと説明が難しいのだが、アーシェリアスは、以前シーゾーからもらった白玉粉で作った白玉団子をお汁粉に入れたのを思い出し、それに似たものだと話した。

 食べたことがあるオスカーやレオナルドは「なるほど」と相槌を打つも、ザックたちは未だ頭に疑問符を浮かべたままといった顔をしている。

「うーん、わかりやすく言うと、白米を片栗粉とこねてまとめた食べ物かな。それを茹でたり焼いたりして食べると美味しいの」

 そう語りながら、今度それでみたらし団子や五平餅を作るのもいいかもと思い付く。

 しかし、今はまず目の前の大福を味わってもらうのが先。

「ただ、今回はお餅がないから白玉粉で作った求肥で包んでみたの」

 ここでまた「ぎゅうひ?」と皆の顔に疑問の色が浮かぶが、もう面倒なのでアーシェリアスは「この包んでいるものがそうよ」と、まずは食え精神で乗り切る。
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