破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 馬車を止めると、門を守る守備兵が近づいてくる。

 王城をかまえる城郭都市内へと入るには、ここで通行証を呈示、もしくは身分を証明しないとならない。

 だが、守備兵は王立騎士の鎧を纏うエヴァンを見るなり敬礼した。

「ご苦労様です! ご一緒の方々は?」

 ザックが誰かわかっていない守備兵の反応に、エヴァンの目がカッと見開く。

「お前! この方はこのファーレン王国の第四」

「こういう者だ」

 エヴァンの大きな声を遮り、ザックは剣の柄にある王家の紋章を見せた。

 すると、守備兵は顔色を変えて慌てる。

「しっ、失礼致しました! どうぞ皆様お通りください!」

 王家の者と王立騎士のセットパワーは強く、アーシェリアスとノアの身分確認はパス。

 ホロ馬車が再び動き出すと、ザックはちらり、エヴァンに視線をやった。

「でかい声で言わなくてもこれで十分行ける」

「しかし、アイザック様の顔を覚えてないのは国の守り手としては失格です!」

 エヴァンが手綱を握りながら憤慨するも、ザックは「仕方ないだろ」と落ち着いた声で話す。

「入城が許可されてる王立騎士団とは立場が違う。まして王子がホロ馬車に乗って王都に帰還するなんて想像もしてないだろうしな」

「確かにそうね。私も王子様は白馬の背に乗っているイメージがあるし」

 アーシェリアスが笑うと、ノアも笑う。

「ボクの中じゃザックはもうホロ馬車のイメージが強くなってるけど」

「私もその方がしっくりくるかも」

「俺も実はそんな気がしてる」

「アイザック様まで何を言ってるんですか。アイザック様はどう見ても白馬の方が」

 と、ザックを振り返ったエヴァンがピタリと言葉を止める。

「いや、ホロ馬車も馴染んでますね。何でもお似合いになる。さすがです!」

 そんなエヴァンもすっかりホロ馬車で手綱を持つ姿に違和感がなくなっており、アーシェリアスは頬を緩ませた。
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