破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
(どこの地方の料理か、とか珍しがっての質問ならわかる。でも、どこで知ったか、なんて……まるで、陛下に心当たりがあるような……)

 ──あるのかもしれない。

 だから、リンカ・イディアルの料理本を秘密裏に入手していたのでは。

 アーシェリアスは、質問に答えもせずこちらから質問するのは恐れ多いと思いつつ、ジャガ……女王に尋ねる。

「もしかして、陛下はご存知だったんですか? 私の作った料理を」

 尋ねられた女王は、そっと瞼を閉じた。

「……ええ。よく似た味付けの料理をいくつか知っています。そして、それらを作った者は私が知る限りふたりだけ」

 睫毛が上向き、ブラウンの瞳が再びアーシェリアスを捉える。

「とある本の著者、リンカ・イディアルと……」

 女王の視線がチラリとザックに移り、告げられたもうひとりの名は。

「シャーリーン・ジェセ・ファーレン」

 母、シャーリーンの名に、ザックの両目が大きく見開かれる。

(ザックのお母様が⁉)

 アーシェリアスもまた驚きに瞳を丸くして瞬きを繰り返す中、女王が「あれを」と宰相に手を差し出す。

 言われるまま宰相が女王に渡したのは、橙色の本だ。

「リンカ・イディアルが様々なレシピを記したこの本を、あなた方が探しているのだと宰相から聞きました」

 探し求めていた本を前に、アーシェリアスは目を輝かせた。

 その隣で、ザックは女王に頷いてみせる。

「その通りです」

「それはなぜ?」

「俺たちの旅の目的が〝幻の料理〟と呼ばれるものだからです。そして、情報を追っていたら辿り着きました」

「幻の料理……確かに、そんな噂もあったわね。それがこの本に載っているのかはわからないけれど、レディアーシェリアス、あなたを呼んだのは頼みがあるからです」
< 158 / 232 >

この作品をシェア

pagetop